2026年7月、熊本県で最大震度7を観測する地震が発生しました。ニュースで被害の様子を見ながら、「うちの防災リュック、ちゃんと機能するかな」と改めて中身を見直すことにしました。
被災された方々には心からお見舞い申し上げます。この記事は、今回の地震をきっかけに我が家の備えを点検した記録として書いています。少しでも誰かの見直しのきっかけになればと思います。
まずは我が家の防災リュックの中身
もともと入っていたのはこのあたりです。
- 水、食料
- 飴などの甘いもの
- 着替え
- カッパ
- 軍手
- ティッシュ
- ビニール袋
- 携帯トイレ
- 懐中電灯
- ラジオ
- カイロ
基本的な防災グッズは一通り揃っていました。ただ、改めて見返すと医療・健康まわりがすっぽり抜けていることに気づきました。ここが今回、薬剤師として一番見直したかったポイントです。
薬剤師として「絶対に入れておきたい」と思ったもの
お薬手帳のコピー、またはスマホ写真
避難先で薬を切らしてしまったとき、何の薬をどのくらいの量飲んでいるかが分からないと、同じ薬を出してもらえないことがあります。紙のコピーだけでなく、スマホの充電が切れる可能性も考えて、紙とスマホ写真の二重で残しておくのが安心です。
常備薬は「命に関わる薬」から優先的に
防災リュックの中身を考えるとき、常備薬は「あったら安心」くらいの感覚で語られがちですが、薬剤師の立場から言うと、優先順位をつけて考えることが大切だと感じています。
最優先:数日〜1週間分は必ず確保したい薬
心臓病(狭心症・不整脈など)やてんかんをお持ちの方は、服薬が数日途切れるだけで命に関わるリスクがあります。災害時は、かかりつけ医療機関にすぐアクセスできない、処方箋なしでは同じ薬が出せない、といった事態が起こり得ます。今回の熊本地震でも、処方箋なしで調剤できる特例が発災翌日から動き出しましたが、それでも「すぐ受け取れる」保証はありません。
こうした持病がある方は、普段から1週間分程度を防災リュックに入れておくことを強くおすすめします。使用期限が近づいたら普段の分と入れ替える、いわば「薬のローリングストック」的な運用が現実的です。(お薬の増量・追加確保については、必ずかかりつけ医・薬剤師にご相談ください。)
次に備えておきたい:解熱鎮痛剤は「アセトアミノフェン」がおすすめ
災害時は、慣れない環境でのストレスや気温変化から、頭痛や発熱が起きやすくなります。解熱鎮痛剤は防災リュックの必須アイテムですが、薬剤師としておすすめしたいのはアセトアミノフェンです。
理由は2つあります。1つは、お子さんも体重に応じて用量を調節しながら使えるため、家族で1種類を共有しやすいこと。もう1つは、インフルエンザなど一部のウイルス感染症の際、ロキソニンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は脳炎・脳症のリスクとの関連が指摘されており、使用を避けるべき場面があるためです。その点、アセトアミノフェンはそうした場面でも比較的使いやすい薬として知られています。
「とりあえず痛み止めを入れておけばいい」ではなく、どの解熱鎮痛剤を選ぶかまで考えておくと、いざという時に迷わず使えます。
経口補水液
水分だけでなく、塩分やミネラルの補給が必要な場面(下痢、脱水、熱中症)を想定すると、水だけでなく経口補水液があると安心です。
コンタクトレンズ・眼鏡
見落としがちですが、視力が確保できないと避難行動そのものに支障が出ます。予備のメガネや、コンタクトの替えは意外と重要です。
生理用品
必需品なのに、防災リストで抜けてしまいがちなものの代表です。
甘いもの
これは実は精神的な安定剤としての役割も大きいと感じています。血糖値対策はもちろんですが、ストレスの大きい避難生活の中で、甘いものが気持ちを少し落ち着かせてくれることもあります。
歯ブラシ
口腔ケアが不十分になると、特に高齢の方は誤嚥性肺炎のリスクが上がると言われています。歯ブラシは水がなくても使えるものを1本入れておくと安心です。
消毒液・マスク
避難所は人が密集する環境になりやすく、感染症対策が重要になります。手洗いの水が十分に確保できない場面もあり得るので、消毒液は水の代替としても役立ちます。
防災食、正直まずいものも多い問題
長期保存を目的とした防災食は、正直なところ当たり外れが大きいと感じています。特におかず系は「災害時だから仕方ない」と割り切って食べるレベルのものもあり、賞味期限が近づいても結局手が伸びず、気づけば期限切れ…ということも。
そんな中で、尾西の携帯おにぎりは我が家では別格です。子どもたちにも好評で、普通に「美味しい」と食べてくれます。あまりに使い勝手が良いので、今では海外旅行の必須品にもなっています。お湯や水を入れるだけで作れる手軽さは、災害時はもちろん、海外の水や衛生面が不安な場面でも安心材料になります。
わざわざ災害時専用の特別な防災食を用意するよりも、普段から食べ慣れていて、かつ美味しいと思えるものを多めにストックし、日常でも消費しながら補充していく「ローリングストック」の方が、結果的に無駄も出にくく、いざという時のストレスも少ないと感じています。
今回の熊本地震で、実際に起きていたこと
今回の地震では、普段服用している薬を持たずに避難した方への対応が、現場で大きな課題になっていたと報じられています。かかりつけの薬局に「処方箋がないと薬は出せません」と言えない状況の中、熊本県薬剤師会が国と調整し、お薬手帳などで服薬歴が確認できれば、処方箋がなくても調剤できる特例が発災の翌日から運用され始めました。
ただ、これは「制度が動き出したタイミング」であって、実際に薬を受け取れるまでの時間とは別の話です。道路の隆起や亀裂で、普段40分の移動が2時間かかったという声もありました。制度が整っても、そこにたどり着けなければ意味がありません。
だからこそ、「誰かが助けてくれるまでの数日間」を自分の備えでしのげるようにしておくことが大事だと、今回改めて感じました。
今回の地震で痛感した「暑さ」という問題
今回の熊本地震は7月末の発生で、酷暑の中での避難生活が大きな課題になっていました。地震そのものの備えだけでなく、季節によって防災リュックの中身を見直すという視点も必要だと感じています。
夏場であれば、塩分タブレットや冷却シートなど、暑さ対策グッズも追加しておくと安心です。逆に冬場であれば、防寒具や使い捨てカイロの量を増やすなど、季節に応じた調整が必要になります。
お薬の伝え方も一工夫
もしお薬手帳を持ち出せなかった場合に備えて、飲んでいる薬の「一般名(成分名)」まで分かっていると、より確実に同じ薬を出してもらいやすくなります。普段からお薬手帳を活用していれば、そこまで神経質になる必要はありませんが、知識として頭の片隅に置いておくと安心です。
年に一度、見直す習慣を
経口補水液や常備薬は、一度入れたまま存在を忘れてしまいがちです。防災の日(9月1日)など、年に一度は中身と期限をチェックする日を決めておくと、いざという時に「期限切れだった」という事態を防げます。
おわりに
今回の地震をきっかけに、我が家の防災リュックには医療・健康まわりの視点がすっぽり抜けていたことに気づきました。薬剤師という立場だからこそ気づけたポイントもあったので、同じように見直しを考えている方の参考になれば嬉しいです。
※この記事は個人の経験や調べた内容をもとにしたものであり、効果や安全性を保証するものではありません。持病がある方や薬の管理については、かかりつけの医師・薬剤師にご相談ください。



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