「保険で貯蓄もできて、保障もついてくる」
そんな謳い文句に惹かれて、ドル建ての終身保険に加入してから、数年が経ちました。今日は正直に書きます。老後資金を増やす手段として見るなら、これは失敗だったと思っています。
保険の見直しや資産形成の相談を受けることも多い立場として、「良かったこと」だけを書くのは簡単です。でも、実際に加入して、保険料を払い続けて、初めて見えてきたデメリットがあります。同じように「ドル建て保険、どうなんだろう」と悩んでいる方の判断材料になればと思い、包み隠さずまとめてみます。
そもそも、なぜドル建て保険を選んだのか
加入を決めた当時の理由は、大きく2つでした。
- 円資産に偏りすぎていたので、外貨も持っておきたかった
- 死亡保障も欲しかったので、「保障+貯蓄」が同時にできる商品に魅力を感じた
当時は「最低利率が保証されている」「円建てよりも利率が良い」という説明を受けて、悪くない選択だと感じていました。実際、契約から10年程度が経過すれば、解約返戻金が払込保険料を上回る設計にはなっています。
さらに今振り返ると、判断ミスだったと感じている点がもう一つあります。夫婦それぞれで契約してしまったことです。夫に万が一のことがあれば家計への影響は大きいので、夫の死亡保障は必要だと今でも思っています。ただ、私自身は、私が死亡することで家計が困るという状況ではありません。「夫婦セットで」という提案の流れに乗ってしまいましたが、冷静に考えれば、私の分は入らなくてもよかった、というのが正直なところです。
ただ、実際に数年間払い続けてみて、当初は見えていなかった落とし穴に気づくことになりました。
実際に払い続けてみて分かったデメリット
① 為替リスクを、まさに「今」体感している
ドル建て保険は、保険料の支払いも、将来受け取る保険金・解約返戻金も、基本的にドルベースで計算されます。つまり、円安になれば、円換算での保険料負担は重くなります。
まさに今、円安が進んでいる局面で、「あのとき想定していたより、円換算の保険料がずっと高くなっている」という状況を体感しています。将来受け取るときに円高に戻っていれば得をする可能性もありますが、逆に今のような円安が続いたまま受け取り時期を迎えれば、想定より目減りするリスクも当然あります。「為替リスクがある」と説明では聞いていても、実際に払い続けてみるまで、この負担感はなかなか実感できませんでした。
② 最初の10年は、解約返戻金が確実にマイナス
契約内容にもよりますが、多くのドル建て終身保険は、契約から10年前後は解約返戻金が払込保険料を下回る設計になっています。つまり、途中で「やっぱりやめよう」と思っても、簡単には手を引けないということです。
私自身、契約後にこの商品に関する良くない評判を耳にする機会が何度かあり、そのたびに解約を検討しました。実際に契約3年目の時点で解約返戻金を確認したところ、払込保険料に対しておよそ60%程度まで目減りしていることが分かりました。かなりの含み損です。
ここで「この赤字を抱えたまま、今すぐインデックス投資に切り替えるべきか」を真剣に検討しました。ただ、すでに大きくマイナスになっている状態から乗り換えても、そこから先の運用でその差を取り戻すには相応の年数がかかります。「今解約して赤字を確定させ、ゼロから積み立て直す」のと「このまま持ち続けて、いずれ元本を上回るのを待つ」のとで、そこまで大きな差にはならないだろうと判断し、結局そのまま継続することにしました。
救いだったのは、途中で解約さえしなければ、いずれ払込保険料を上回る設計になっているという点です。目先の含み損に慌てて解約さえしなければ、長期的にはマイナスで終わる商品ではありません。ライフプランは10年もあれば変わりますが、その途中でまとまったお金が必要になり、身動きが取れなくなるリスクがあることは、実際に経験してみて初めて重みを持って理解できました。
③ 死亡保険としても、貯蓄としても中途半端
これが、一番後から気づいた本質的な問題かもしれません。
死亡保障だけが目的なら、掛け捨ての定期保険の方が、同じ保険料でずっと大きな保障額を確保できます。貯蓄・資産形成が目的なら、NISAでインデックス投資を積み立てる方が、手数料も低く、流動性も高く、長期的なリターンも期待できます。
「保障と貯蓄、両方いっぺんに」という発想は、一見効率的に思えます。でも実際には、保障としては保険料に対して保障額が小さく、貯蓄としては流動性が低く手数料も割高という、どちらも中途半端な形になりがちです。
最初から「死亡保障は掛け捨てで確保し、貯蓄はNISAで別に積み立てる」という形にしていれば、保障もしっかり確保しつつ、資産もより効率的に増やせていたはずです。これが、今一番後悔しているポイントです。
④ NISAでインデックス投資をしていた方が、確実に増えていた
最低利率は保証されているとはいえ、この数年のインデックス投資(いわゆるオルカンなど全世界株式インデックス)の実績と比べると、正直なところ見劣りします。
もちろん、インデックス投資には元本保証がなく、暴落のリスクもあります。ドル建て保険の「最低利率保証」には、その意味での安心感があるのは事実です。ただ、「老後資金を着実に増やす」という一点に絞って比較するなら、この数年に関して言えば、NISAで無難にインデックス投資をしていた方が、確実に資産は増えていました。
それでも、今すぐ解約はしていません
ここまで散々デメリットを書いておいて何ですが、実は我が家はこのドル建て保険を解約していません。
一番大きな理由は、先ほど書いた通り、すでに含み損が出ている状態から今さら解約しても、そこから改めて積み立てを始めるのと大きな差にならないと判断したからです。「もっと早く気づいていれば」という後悔はありますが、今この時点で慌てて動くよりは、このまま持ち続ける方が合理的、という結論になりました。
もう一つの理由は、資産の分散です。インデックス投資も、当然ながら元本保証はなく、株価がどうなるかは誰にも分かりません。ドル建て保険は、最低利率が保証されている分、株式とは値動きの性質が異なる資産として持っておく意味もあるだろう、と自分を納得させています。「増やすための主力」ではなく、「資産の一部を、あえて値動きの違う形で持っておく」という位置づけに、気持ちを切り替えた形です。
そして、実は将来的な使い道も見えてきています。老後、今の住まいから離れて地元に戻る際、住居を購入する計画があるのですが、その時にこの保険を解約し、頭金や購入資金の一部に充てるという選択肢を考えています。「いつか使う予定のあるお金を、今は円以外の形で置いておく」と考えると、多少納得感が出てきました。
つまり、**「これから新しく入るならおすすめしない。特に、家計への影響がない側の配偶者まで一緒に契約する必要はない。でも、すでに入っていて、含み損が大きい段階で無理に解約するより、明確な使い道が見えているなら、長期で持ち続けるのも一つの選択肢」**というのが、実体験からたどり着いた結論です。
これから考える人へ:保障と貯蓄は、分けて考える
もしこれから「保険で貯蓄もできたら」と考えている方がいたら、私からお伝えしたいのはこれです。
- 死亡保障が欲しいなら:掛け捨ての定期保険で、必要な保障額を最小限のコストで確保する
- 「夫婦セットで」に流されない:保障が必要なのは、その人が死亡することで家計が実際に困る側です。共働きでなかったり、収入の柱が一人に偏っていたりする場合、もう一方まで同じように加入する必要があるかは、一度立ち止まって考える価値があります
- 資産を増やしたいなら:NISAなどの非課税制度を使って、インデックス投資などで別に積み立てる
- 外貨も持っておきたいなら:保険という形にこだわらず、外貨預金や外貨建てのインデックスファンドなど、もっと流動性の高い方法も検討してみる
「一つの商品で全部まかなえたら楽なのに」という気持ちは、私もすごくよく分かります。でも実際には、目的ごとに分けた方が、結果的にそれぞれの目的に対して効率よく準備できることが多い、というのが今の実感です。
まとめ
ドル建て保険は、「保障もついて、貯蓄にもなる」という分かりやすさに魅力を感じやすい商品です。ただ、実際に数年間払い続けてみると、為替リスク、流動性の低さ、保障としても貯蓄としても中途半端になりがちな設計、といったデメリットが、じわじわと実感として積み重なっていきました。
もし今、同じような商品を検討している方がいたら、「保障」と「貯蓄」を最初から分けて考えることを、ぜひおすすめしたいです。すでに加入している方も、「なんとなく続けている」のではなく、「何のために持っているのか」を一度言語化してみると、続けるべきか見直すべきか、判断がしやすくなるかもしれません。
私自身、この経験を通して、「保険は保障、資産形成は資産形成」とシンプルに分けて考えることの大切さを、身をもって学びました。



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